インフォーメーション・サービ123:2008年度対策 経済事情 連載 第五回


「我が国の国際収支」

 要約:

 2002〜2004年には、円安や世界景気の拡大等により、経常収支黒字は増加し、特に、2003年と2004年は、2年連続過去最大の黒字となった。2005年は、原油価格高騰による輸入増のため経常収支黒字は若干減少したが、06年は、再び過去最高の黒字となった。

 資本収支は、恒常的に赤字であるが、2003年には、海外からの株式投資が急増し、資本収支は34年ぶりに黒字となり、2004年も同様に黒字となった。2005年と06年は、アメリカの金利上昇のため海外への債券投資が急増し、再び大幅な赤字となった。

1 最近の経常収支黒字の状況

(1)2004年の過去最高の経常収支黒字

 04年の経常収支黒字は前年比17.9%増の18兆5,908億円となり、2年連続で過去最高を更新した。世界的な景気回復からアジア向けを中心に輸出が大幅に伸び,貿易黒字が16.7%増の14兆3,108億円となったことや、債券や株式など対外資産からの利子や配当による所得収支12.0%増の9兆2,733億円と過去最大となったためである。貿易・所得収支の大幅黒字が、サービス収支の赤字増加を吸収し、過去最大の経常収支黒字となった。

(2)2005年の経常収支黒字

 05年の経常収支黒字は、前年比3.1%減の18兆479億円の黒字で、4年ぶりに黒字が減少した。主に、貿易収支黒字の減少による。輸出入とも増加したが、原油価格の高騰で輸入の伸びが輸出の伸びを大幅に上回り、貿易収支は同25.5%減の10兆3,502億円の黒字  で、4年ぶりに減少した。

 一方、所得収支黒字は、同22.5%増の11兆3,595億円で、貿易収支黒字を初めて上回った。日本の経済構造が、輸出に頼る貿易立国から海外投資でも収益を得る投資立国へ変化していることが明らかとなったといえる。

 所得収支黒字のうち、約8割は外国債券などの証券投資である。金利が高い欧米へ積極的な証券投資を続けたためである。そして、約2割が経営目的をもった直接投資による収益である。

(3)2006年の経常収支黒字

 06年の経常収支黒字は、前年比8.7%増の19兆8,390億円の黒字となり、再び過去最高となった。貿易収支の黒字が約9,000億円減少したが減少したが、所得収支黒字が約2兆5,000億円増加したことが黒字拡大となった。

2 貿易相手国

(1)対アジアが中心

 2005年の輸出入合計の上位10カ国を見ると、7ヶ国はアジア諸国である。これは、90年代に中国、NIEs諸国(韓国、台湾、シンガポール)、ASEAN諸国(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなど)が経済成長を遂げ、これらの国々との貿易が盛んになったためである。

(2)中国は最大の貿易相手国

 特に、中国からの輸入が急増しており、2002年からはアメリカを超え第一位となり、2005年の中国の輸入シェアは、21.0%である。中国向け輸出も、アメリカに次ぎ第二位である。

 中国の輸出入額は増加が著しく、2004年には対中国の輸出と輸入を合わせた貿易額(香港を含む)は22兆1,999億円となり、アメリカを抜き日本の最大の貿易相手国となった。05年も同様である。日本企業が賃金などコストが安い中国に生産拠点を移し、日中の国際分業化が進んだことが大きな要因である。

3 我が国の資本収支

(1)経常収支黒字の拡大と資本収支赤字の拡大

 経常収支黒字が拡大すると、資本の流出は増え、資本収支赤字は増加する。海外との貿易で得た資金を、海外に投資しているのである。

(2)2003〜04年の資本収支黒字

 2003年の資本収支は、経常収支黒字が増加したにもかかわらず、8兆1,320億円の黒字(流入超過)であった。資本収支が黒字であったのは34年振りであり、海外からの我が国への株式投資(証券投資に含まれる)が、急増したことが主な要因であった。2004年も、資本収支は1兆4,915億円の黒字で、前年に続き黒字となった。前年と同様に、わが国への株式投資などによる投資収支の1兆9,882億円の黒字が主な要因であった。

(3)2005〜06年の資本収支赤字への転換

 2005〜06年の資本収支は、一転して13兆5,870億円の大幅な赤字であった。海外からの株式投資は増加したが、アメリカの金利上昇のために海外への債券投資などが急増したためである。

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