インフォーメーション・サービ122:2008年度対策 経済事情 連載 第四回


「企業部門」

 要約:  2001年から景気後退が明らかとなり、鉱工業生産指数は2001年は前年度比6.8%減であった。しかし、2002年からの景気回復により、鉱工業生産指数は2002年後半から前年比プラスの伸びに転じた。2003〜2006年度の上場企業の企業収益も4年連続の増収増益となった。企業設備投資も2003年第二・四半期から前年比プラスの伸びに転じ、2003~2007年は6%前後の高い伸び率であった。この背景には、雇用・設備・債務の3つの過剰問題を解消した企業の体質改善があった。

 大型倒産や金融機関の貸し渋りなどにより、2000年度の倒産企業の負債総額は戦後最悪となり、2001年度の負債総額もそれに次いだ。2002〜2006年度の負債総額は、大幅に減少したが、公的支援が倒産を先延ばししている側面も大きい。そして、倒産の要因は、構造的要因を抱えた業績不況によるものが最も多い。

1 設備投資の動向

(1)実質民間企業設備投資は、景気拡大期には増加し、景気後退期には減少する傾向にある。

(2)2001年からの景気後退により、2001年の実質民間企業設備投資は、前年の高い伸びから前年度比1.3%増にとどまった。そして、2002年には、前年の景気後退の影響で、実質民間企業設備投資は同5.3%減であった。

(3)しかし、2003年は、後半に景気回復が確かなものとなってきたため、実質民間設備投資は同5.9%の高い伸びとなった。そして、2004年度も同6.3%、2005年度も同5.8%の高い伸びであった。そして、06年度も同7.9%の大変高い伸びが見込まれている。好調な企業業績を背景に、設備投資の高い伸びが継続したのであった。

2 企業収益(以下、連結べ−ス)

(1)景気後退入りした2001年度の上場企業の経常利益は、前年度比42.4%減となり、IT不況とリストラにより3割の企業が赤字となった。

(2)景気回復が続き、03〜06年度まで全産業の経常利益額と売上高経常利益率とも4年連続で増加し、その水準もバブル期を超える高さとなっている。

(注)経常利益とは、企業の毎年の経常的な活動により、生じた利益である。営業利益プラス営業外利益により、計算される。

(3)このような好調な企業業績の要因は、石油価格高騰による収益圧迫要因はあるが、内需・外需とも増加している状況の下で売上高が伸び、バブル崩壊後の過剰雇用、過剰設備、過剰債務の3つの過剰問題の終息による企業の体質改善が大きかった。これにより、人件費や利払いなどの固定費の削減となり、損益分岐点が大きく引下げられた。

(4)好調な企業業績を反映して、大幅な増配や復配など株主還元策に踏み切る企業が相次いでいる。また、株式数を減らし1株当たりの価値を高める自社株買いも活発である。

 07年3月期決算で、増配など株主への利益還元を打ち出す上場企業が増えている。新光総合研究所によると、東証一部上場企業の07年3月期の配当金総額は、約5兆9,500億円と過去最高になる見込みだ。業績の回復に加え、外国人株主を中心とした増配要求が増えていることも要因と見られる。

 業種別で見ると、原油・原料高の恩恵を受けた商社や非鉄金属のほか、海外販売が好調な自動車や電機などでも増配が目立つ。大手銀行も増配で株主重視をアピールした。

 上場企業の自社株買いも、06年度に総額約7兆5,000億円と過去最高となった。自社株を買って償却すれば、発行済み株式数が減り、株価の上昇を促し増配と同様に株主への利益還元となる。

 これは、活発なM&A(企業の合併・買収)の動きにより、高配当で株主をつなぎとめ、安定株主を確保する必要が出てきた。増配の表明で株価が上昇すれば時価総額が膨らみ、買収されにくくなる効果も期待できる。

 一方、現金などの内部留保が多いのに株主還元が不十分とみなした企業に、外国人株主らが圧力を強めていることも背景にある。6月の株主総会で配当増を求める株主提案は10件と、06年実績を上回る見込みだ。

 このように、労働分配率が低下する中で、株主への配当増が行われているといえる。

(注)上場企業中間決算、5年連続増収増益(11/13) ***

 東京証券取引所第1部に上場する3月期決算企業の07年9月中間決算は、5年連続の増収増益となる見通しになった。中国やインドなど新興国の高成長や円安が好業績を支えた。しかし、下半期(10〜3月)は、急激な円高やアメリカ経済の減速の影響が懸念され、通期の収益の伸びは鈍化しそうだ。

 9日までに中間決算発表を終えた東証1部上場681社の合算の売上高は、前年同期と比べ9.1%増え、経常利益も8.8%増加した。税引き後利益も17.7%増加し、08年3月期の株主配当の総額は、前期より10.8%多い約6兆6千億円と5年連続で過去最高を更新する見通しだ。

 好業績の最大の要因は、好調な外需だ。ロシア、中東などの需要増をつかんで輸出を拡大した自動車は大手8社がすべて増収となり、7社は売上高が過去最高を記録した。上半期の円安により、8社の営業利益は合わせて約3,500押し上げられた。

 しかし、今後はアメリカ景気の減速や円高により、業績が鈍化する可能性があるとの見方が大勢だ。07年秋以降、サブプライム問題、原料高、円高が深刻化すれば、通期の業績がさらにしたぶれし、企業は、設備等計画の修正を迫られる可能性もある。

3 企業倒産の減少傾向

(1)倒産企業(負債1千万円以上)の負債総額は2001年から、倒産件数は02年から減少を続けている。

(2)過去5年倒産の減少は顕著であるが、大手銀行の不良債権処理は峠を越え、倒産はバブル処理型から本業不振による構造問題へ移行しているといえる。

(3)倒産の減少は景気回復も一因であるが、政府が中小企業向け金融支援を充実させた影響も大きく、延命策により不振企業が残存している側面もあることに注意しなければならない。

(4)しかし、07年は、倒産件数が前年比6.4%増の14,091件で4年ぶりの高水準であった、負債総額も同4.1%増の5兆7,279億円で、7年ぶりに前年を上回った。法改正により建設業者の倒産が増えた上、原材料高が中小企業の経営を圧迫した。

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