インフォーメーション・サービ121:2008年度対策 経済事情 連載 第三回


「家計支出」

 要約: 2003年秋から、景気回復により雇用環境が改善し個人消費は緩やかな増加を続けている。また、高齢化の進展もサービス消費の増加に寄与している。

 住宅建設は、所得・雇用環境の改善や低水準の金利により、03年から堅調に増加し、05年後半からは年率換算で120万戸台が定着しているが、07年6月の改正建築基準法により急減している。

1 2003年秋以降の個人消費の緩やかな増加

 景気後退下で、個人消費は、2001年度は3.4%減と急減し、景気後退の大きな要因となった。景気回復に転じた2002年度以降も、個人消費は、低迷していた。

 しかし、2003年秋以降、個人消費は明らかな増加となっている。これは、2003年からの雇用リストラの一巡により、完全失業率が低下し消費者マインドが改善したことや、家計所得が03年後半に下げ止まり05年に持ち直してきたことが主な要因である。

 国民所得統計では、実質民間最終消費支出は(個人消費)は、04年度1.6%増、05年度は1.9%増である。このような動きから、個人消費は実質2%程度の増加を続けていると見られる。

2 2006年後半に鈍化した個人消費

 しかし、2006年半ばを過ぎると、個人消費の伸びには鈍化が見られた。06年7〜9月期は、前期比年率4.1%減、10〜12月期は前期の反動により同4.3%増となったが、4〜6月期の消費水準を取り戻すにとどまった。この間、消費に対する消費者の態度を表す、消費者マインドが横ばいで推移し、所得の伸びが鈍化したため、06年後半の個人消費はおおむね横ばいで推移した。

07年に入ると,依然として所得や消費者マインドが横ばいで推移しているが、1〜3月期の個人消費は同3.1%増と持ち直しの動きが見られた。  

3 消費増加による貯蓄率低下

 家計貯蓄率は、1997年度に11.4%となった後、7年連続で低下し、04年度には2.7%であった。可処分所得が97年度をピークに減少を続け、一方で、消費は緩やかに増加しているためである。特に、今回の景気回復の02年度以降、横ばい程度に留まる家計所得の下で、消費支出が回復していることが、貯蓄率低下となっている。

 最近の貯蓄率低下は、高齢者世帯が増加していることも反映していると見られる。一般に、若年のときは貯蓄を積み増し、高齢期には貯蓄を取り崩すと見られ、人口の高齢化は貯蓄率を低下(消費性向を上昇)させる方向に影響を与えると見られる。

4 住宅建設の推移

(1)05年〜06年の住宅着工

 05年のの住宅着工戸数は124.8万戸と、97年度以来の高水準となり、3年連続で増加した。貸家と分譲マンションが高い伸びとなっ た。賃貸マンションなどの貸家戸数は51万戸と96年度以来の高水準で前年度比10.8%も増え、分譲マンションも37万戸と94年度以来の水準となった。

 貸家や分譲マンションが高い伸びを示しているのは、所得環境の改善や低金利により、住宅取得意欲や貸家への投資意欲が向上しているためである。さらに、都市部の継続的地価下落により、利便性の高い都市部の物件の需要が増加したことや、団塊ジュニア層が一次取得年齢になってきているためもあると考えられる。

 以上のように、住宅着工は好調であり、住宅着工戸数は年率換算で05年度後半から120万戸台がほぼ定着している。日銀のゼロ金利解除により、住宅ローンの金利先高観が強まっている現状では、個人に前倒しでマイホーム購入を促す駆け込み需要が見込まれ、住宅着工は堅調に推移するとの見方が多かった。

 06年以降も、住宅着工は、景気回復の中で、低水準の金利の動向も反映して、年率120万戸半ばから130万戸と高い水準で推移していた。しかし、07年6月の改正建築基準法により、建築確認が厳しくなり、翌月から住宅着工は年率100万戸以下に急減した。

[先頭][Home][情報サービス目次]