インフォーメーション・サービ116:2007年度対策 経済事情 連載第13回[ロシア経済]


Y ロシア経済

1 市場経済移行後のロシア経済

 91年末に、ソ連は崩壊し、ロシアは市場経済化路線をとった。しかし、90年代のロシア経済は、この路線が成功したとはいえない。90年代の実質GDP成長率は、平均で−5.0%であり、消費者物価上昇率も平均で481.1%であった。

 移行後、初めてプラス成長になったのは、97年であった。97年は、ロシアの恵まれたエネルギー部門などへの外資の受け入れにより、工業生産が伸び、プラス成長となった。

2 98年のロシア金融危機

 98年に、金融危機が発生し、実質GDP成長率は再びマイナスとなり、−4.6%となった。当時、ロシアの高利の短期国債に外資が流入していたが、アジア通貨危機を契機に、外資がロシアの構造問題に懐疑的となり流出した。株価は急落し、短期国債の利回りは急上昇し、金融危機が発生した。ルーブルの売り圧力は強く、1998年9月に固定相場制から変動相場制へ移行した。

ロシアの構造問題

a.資本の国外流出が進み、犯罪などの地下経済が拡大し、徴税率は低く、歳出の削減が進まず、構造的財政赤字であった。この財政赤字を高利の短期国債の大量発行で賄っていた。

b.石油、天然ガスなどの一次産品に依存した貿易・経済構造である。

3 高成長が続くロシア経済

 ロシア経済は、原油価格などのエネルギー品目の輸出品の国際価格上昇により、 99年から2005年まで高成長が続いた。

 2005年は、実質GDP成長率は6.4%と前年の7.2%より若干低下したが、高成長であり、景気拡大は続いている。外需は、エネルギー生産の伸びの鈍化などにより減速したが、内需の個人消費、投資とも好調であった。個人消費は、可処分所得や低金利を背景に前年比11.1%増の2桁の伸びであった。固定投資も、輸出産業の設備投資や政府投資により、前年比10.5%増と2桁の伸びが続いた。

 消費者物価上昇率は、05年は10.9%増で依然として高水準である。この背景には、輸出収入の急増がマネーサプライの増加をもたらしていることや、消費財の供給制約のため、インフレ圧力が存在していることである。

 失業率は、景気拡大を反映し、99年以降低下傾向にあり、04年の8.2%から05年は7.6%に低下した。

 輸出増加による景気拡大のため、経常収支も、財政収支も黒字である。05年の経常収支は前年比43.6%増の842億ドルであった。財政収支も、02年から5年連続黒字であり、06年度予算は7,760億ルーブルの黒字(対GDP比3.2%)であった。

 このように、ロシア経済は非常に好調であるが、ユーコス事件に見られるようにプーチン政権の独裁的・強権的政治姿勢に、一部で企業マインドが悪化しており、内外の企業に投資抑制の動きが出ているのは、懸念材料である。

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