インフォーメーション・サービ114:2007年度対策 経済事情 連載第11回[東アジア経済]


W 東アジア経済

1 NIEs(新興工業経済群)

 NIEsは、60〜70年代の関税などにより自国産業の保護育成を行う輸入代替工業化政策から、70〜80年代の外資導入や輸出指向型政策に転換し、成長を遂げた。85年のプラザ合意による円高により、日本を中心として各国の投資が、安い労働力のNIEs諸国へ向かった。NIEsは、急速に成長し、賃金が上昇し為替レートも上昇した。そのため、先進国の資金は、80年代後半はASEAN(東南アジア諸国連合)諸国へシフトした。つまり、労働集約的な産業は、NIEsからASEANへシフトし、ASEAN諸国は、急成長した。他方、NIEsは、資本・技術集約的産業にシフトし、高い成長をその後も維持した。

 東アジアは、中国、東欧と同様に、日本を初めとした先進国からの投資受け入れにより、次第に発展してきたといえる。                     

2 韓国経済

 97年に、過剰投資により財閥企業が次々と倒産し、この不良債権を抱えた銀行への評価が低下した。このような状況下で、アジア通貨危機は韓国にも波及し、97年10月下旬から12月の短期間に、韓国ウォンは約53%下落した。外貨準備の不足により、同年12月にIMFから570億ドルという史上最大規模の支援を受けることになった。この融資の見返りに緊縮的財政・金融政策の厳しい条件を受け入れた。このため、98年は、―6.7%とマイナスの実質GDP成長率となった。

 99年は、IMFとの合意の下に、通貨・金融危機克服のための金融再編などの経済構造改革に取り組み、10.9%の高成長となり、他のアジア諸国に比べ最も立ち直りが早かった。2000年も、IT関連製品や自動車生産の伸びを中心に、9.3%成長となった。

 2001年は、世界景気の後退により輸出や設備投資が減少し、3.1%成長と大幅に減速した。しかし、2002年は、前半が民間投資や建設投資が景気をけん引し、後半は世界経済の加速により輸出が大幅に増加し、実質GDP成長率は6.3%の高成長となった。2003年は、クレジットカード優遇策の反動による家計債務問題のため民間消費が減少し、また、設備投資も減少したため、2四半期連続のマイナス成長となり、景気後退となり、2003年の実質GDP成長率は3.1%となり、大幅に鈍化した。

 2004年は、家計債務問題が解消していないため消費は前年比−0.5%であったが、世界景気回復により輸出が急増し景気は回復し、4.6%の成長となった。

 05年の実質GDP成長率は、4.0%。であった。年前半は、IT関連財の世界的 な在庫調整により緩やかな回復であった。年後半は、クレジットカードに関する家計債務の調整が進展し

、さらに所得・雇用環境の改善のため、個人消費が加速した。また、世界的なIT需要の回復により輸出が伸び、設備投資も伸び、景気は堅調に回復した。

 金融政策は、引締め政策が行われており、06年2月に前年の10月、12月に続いて、政策金利(コールレート)を0.25%引上げ4.00%とした。これは、予想以上の景気回復や、原油価格高騰の継続というインフレ圧力などのためである。

3 台湾経済

 台湾は、アジア通貨危機の影響を最も受けなかった。97〜99年も内需に支えられて高成長であった。2000年も、輸出が寄与し、実質GDP成長率は5.9%であった。しかし、2001年は、アメリカ経済の減速により、IT関連製品を主として、輸出や設備投資が大きく減少し、−2.2%と戦後初のマイナス成長となった。

 しかし、2002年は、IT関連を中心に中国向け輸出が大幅に増加し、前年のマイナス成長から脱し、実質GDP成長率は3.6%の成長となった。一方、対中投資の増加により、産業空洞化の懸念がある。

 2003年は、前半にSARSの影響で景気は落ち込んだが、電子製品を中心に輸出が拡大したことにより、景気は回復し、実質GDP成長率は3.4%となった。しかし、消費者物価上昇率は−0.3%とデフレが続いている。

 2004年は、電子産業が好調なため民間投資は30%近い伸びとなり、6.1%の高い成長であった。ただし、IT需要の世界的な鈍化や中国の引締め措置などにより、輸出が減少し、年後半から景気は下降傾向となっている。

 2005年の実質GDP成長率は、政府見通しを上回り4.1%であった。年前半は 緩やかな成長であったが、年後半は、IT関連財の需要が世界的に持ち直し、輸出が増え、景気拡大が加速した。通年では、失業率が低下し、雇用・所得環境の改善により、個人消費が前年比3.0%となった。

 金融政策は、原油価格高騰によるインフレ抑制のため、政策金利を04年10月以降7四半期連続で0.125%ずつ引上げ、01年10月以来の2.375%の高い水準となった。

4 シンガポール経済

 シンガポールは、97年は高い成長であったが、98年は、通貨危機による近隣諸国への輸出減により、実質GDP成長率は0.4%の低成長であった。しかし、以降は回復し、99年は6.4%成長、2000年は9.4%の高い成長であった。しかし、2001年は、世界経済の後退により、IT関連部門の輸出が大幅に減少し−2.4%成長となった。

 しかし、2002年には、IT部門は回復していなかったが。科学・薬品製品の生産・輸出の増加により回復傾向となり、実質GDP成長率は2.2%とプラス成長に転じた。

 2003年は、年前半にSASRやイラク戦争の影響により景気が低迷し、実質GDP成長率は2.9%成長となった。しかし、後半は、電子製品や化学・薬品関連製品の輸出が増加し、これにより生産、雇用が増加し、輸出主導の景気回復であった。

 2004年は、8.7%の成長で2000年以来の高い成長となった。年前半は、アメリカ向けを中心としたIT需要や、バイオ関連製品の輸出が好調であったため、高成長となった。しかし、年後半は、成長を支えているIT関連の生産や輸出が鈍化したため、成長は緩やかになった。

 2005年も、前年に続き高成長となり6.4%であった。年前半は減速したが、後半は、IT関連財の輸出が増加し、経済をけん引した。そして、失業率も、03年の4.0%から05年の3.1%へと低下し、賃金も上昇したため個人消費も回復するという好循環となっている。

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