インフォーメーション・サービ110:2007年度対策 経済事情 連載第7回[雇用情勢]


Z 雇用情勢

1 雇用の状況

(1) 企業の労働需要の増加のため、労働需給は引き締まっており、雇用者数も次第に増加している。03年以降、雇用者数は緩やかに増加しているが、05年度は前年比65万人増と増加ペースが高くなっている。依然として、医療、福祉、卸・小売り、情報通信業という第三次産業の雇用者数の伸びが大きいが、05年度はこれまで減少を続けてきた製造業も雇用者数が増加に転じた。

(2) そのため、有効求人倍率は、06年10月時点で1.06倍と1992年以来の高水準である。一般労働者の倍率は0.6倍程度であるが、パートタイムの倍率は2倍を超える。

(3) 企業の雇用不足感を見ると、パートタイムの不足超過が継続する中で、常用雇用も03年後半に過剰から不足に転じている。そして、企業の新規採用も増加に転じた。

2 パートタイム労働者比率の増加

 パートタイム労働者比率は、上昇しており、92年に13.8%であったが、2004年には25.3%に上昇している。

 上昇の理由

(1) 一般の労働者に比べ、人件費が半分程度である。

(2) 特定時間の労働投入が可能であることである。

(3) 景気変動に応じた労働投入の調整が可能であることである。

3 現金給与総額の変化

(1) 98年に戦後初めて現金給与総額が減少した。これは、所定外給与(残業手当)や特別給与(ボーナス)が大幅に減少したためである。そして、パートタイム労働者の増加も平均給与の低下に寄与している。           

(2) 現金給与総額は、98年〜04年までマイナスであった。しかし、05年に入り、パートタイム労働者が頭打ちとなり、新卒使用の増加とともにフルタイム労働者が7年ぶりに前年比増加に転じ、賃金にプラスの影響を与え、定期給与やボーナスも増加した。

4 完全失業率の減少

 完全失業率は、91年以降長期的に上昇傾向にあり、特に98年以降は急上昇しており、2002年は5.4%であった。完全失業者数も、2002年は359万人であった。自発的失業者も多かったが、リストラによる非自発的失業者がそれ以上に増加していた。

 しかし、2003年初めから完全失業率は低下し、失業率は最高の5.5%から06年10月の4.1%まで低下し、完全失業者も大幅に減少した。

(1) 2003年からの完全失業率低下の要因

 雇用の伸びが低い中で、完全失業率が低下傾向にある要因としては、次の要因 が挙げられる。

@ 企業のリストラがピークを過ぎ、新たな失業者が減少している。

A 非労働者である主婦等が、就職しようとして、非労状態から失業者へ移行する人数が減少している

(2) 高水準の長期失業者

 失業期間1年以上の長期失業者は、91年2月に24万人であったが、2003年4〜6月期には127万人へと増加した。2004年第1四半期は、112万人へと低下したが、依然高水準である。

 年齢別では、25〜34歳の若年層の長期失業者が最も多い(若年層は、完全失業率も高水準である)。長期失業者が2003年半ばから低下している中で、若年層の長期失業者は増加傾向にあった。

5 フリーターとニート

 2005年の成人式を迎える若者は、昨年より2万人少ない150万人で、総人口に占める割合は1.18%で、1968年以降では2番目に低い。少子高齢化が進み人口減少社会に向かう日本の懸念事項が、「ニート」に象徴される社会参加意欲に乏しい若い世代が急増している現象である。

 学校に行かず、働かず、職業訓練にも参加しない無業者を意味する15〜34歳のニート層は、2002年で85万人にのぼる。また、正規の就職をしないでアルバイトを繰り返すフリーターは、1980年代の後半に登場したが、2005年現在201万人に上るという。このような状況は、若者が将来の夢を描けないだけでなく、税収や社会保障制度などの国の活力を脅かす危うい状況である。

 ニートで突出しているのは、学卒後の19歳と23歳の層である。希望する就職先などが見つからず、そのまま社会への参加意欲を低下させてしまうケースが少なくないと見られる。夢を抱いた若者が社会参加へ挑戦し挫折した場合、日本は再挑戦の仕組みが少ない社会といわれる。職業教育の再構築とあわせて、失敗を乗り越えてやり直しができる仕組みの構築が不可欠である。

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