インフォーメーション・サービ104:2007年度対策 経済事情 連載第1回[日本経済事情]


T 日本経済の動向

1 90年代の日本経済の低迷

 90年代は、「失われた10年」ともいわれ、実質GDP成長率も、0%台や1%台 の年度が多かった。その背景には、バブル崩壊による資産価格の下落による倒産、銀 行の不良債権の累積が挙げられる。90年代の例外としては、96年の3.4%成長 である。これは、97年の消費税引き上げ(3%→5%)の駆け込み需要が、大き く働いたのが主な要因であった。

2 最近の日本経済

(1)2000年11月からの景気後退とデフレ

 2000年11月からの景気後退は、2000年後半からのアメリカ経済の景気減速やIT不況による。景気動向指数の一致指数も、2000年後半から50%を割る月が出始め、2001年からは50%割れの月が続いた。輸出が減少し、設備投資や住宅投資が大幅に減少した。2001年度は、実質GDP成長率が−1.2%と戦後3回目のマイナス成長となった。また、名目GDP成長率が−2.4%と、99年以来のデフレの進行が明白となっている。デフレは、企業の債務を増加させ、銀行の不良債権を増やし、経済活動の足を引っ張るという大きなマイナス面があるのである。

(2) 2002年1月からの景気拡大

 2002年に入り、アメリカを初めとした世界経済の回復により、日本経済も景気後退から脱し、回復基調にあった。2002年2月から、景気動向指数の一致指数も50%超の月が続いている。 ただし、99年秋以降続いているデフレの終息の見込みが立たないことや、企業はリストラを強化し、消費や設備投資は大きくは伸びず、03年にはイラク戦争がはじまり、輸出は伸びず、景気は踊り場的状況となった。 しかし、03年央にはイラク戦争が早期に終了(テロは継続中)する中で輸出が回復した。そして、03年初からの失業率の低下による雇用者所得の下げ止まり、リストラによる企業の高収益により、個人消費が底固く推移し、企業の設備投資もプラスの伸びに転じた。10〜12月期の実質GDP成長率が年率換算で欧米を上回る3.8%の高成長となった。そして、2004年1〜3月期も実質GDP成長率は、6.8%の高い伸びとなった。その結果、2003年度の実質GDP成長率が2.0%となった。 しかし、04年のアテネ・オリンピックへの甘い需要見通しにより、世界的なIT 関連財が過剰在庫となり、日本もIT関連財の在庫調整と輸出の鈍化により、04年 後半に再び踊り場的状況となった。

 IT関連財の在庫調整は世界的な需要増により持ち直し、短期間で終了し、05年央には生産がプラスの伸びに転じるようになった。さらに、05年後半にはアメリカ、アジア向けを中心に輸出が回復した。企業収益も改善が続き、設備投資も増加し、個人消費も雇用改善の中で緩やかに増加した。政府は、前年からの景気は踊り場を脱しているとし、05年8月に、景気の足踏みを意味する踊り場からの脱却を宣言した。日銀の福井総裁も、踊り場をほぼ脱却したと判断し得るとの認識を示した。 日本経済は、その後民間需要を中心とした回復を続け、06年11月には景気拡大機関が58ヶ月となり、いざなぎ景気を超え戦後最長の景気拡大となった。

(3)デフレの現状

 消費者物価指数は、1999年以降2003年まで継続的に下落した。いわゆるデフレである。2004年は0.0%のプラスであったが、2005年は再び前年比マイナス0.3%となり、デフレは終息したとはいえない。  デフレの主な要因は、財の需給が供給超過であることである。そのほかには、生産性上昇により、単位労働コストが低下したためでもある。

 しかし、05年10月以来、消費者物価上昇率が前年同月比プラスの伸びの月が続き、消費、投資も好調であり、デフレからの脱却の可能性は高くなっている。

 一方、デフレは、地価や株価等の資産価格においても進行している。公示地価は、91年をピークに06年まで15年連続下落し、ピーク時に比べほぼ半分になっている(東京都区部では、ピーク時に比べ、下落率は、住宅地が62.6%、商業地は80.1%になっている)。しかし、下落率は縮小しており、06年に、東京、大阪、名古屋三大都市圏の商業地は、そろって15年ぶりに上昇した。 株式資産額は、最近の株式市場の活況もあり、バブル末期の90年末の株式資産額に比べ、7.9%減に留まっており、地価の下落ほどではなく、資産デフレの一因であった株式については解消されている。05年度中の日経平均株価の上昇率は、46.2%となり、先進国中最大の伸びとなっている。

(物価のデフレは、企業の実質債務負担の増加、企業の設備投資の抑制、実質金利の上昇、そして、実質賃金の上昇をもたらす。そして、資産価格のデフレは、バランスシートの悪化、資金調達の困難化による設備投資の抑制、逆資産効果による消費の抑制をもたらす。)

3 格差社会

 日本の経済格差は広がりつつある。厚生労働省の2004年6月の所得分配調査では、所得の最新(02年)のジニ係数は0.4983と過去最大となった。税や社会保障を考慮した再分配所得のジニ係数は0.38に留まる。しかし、90年代に比べると上昇している。

 正規雇用者が減少し、一方、フリーターやパートタイマーなど非正規雇用者の増加が、ジニ係数上昇の背景となっている。また、親との同居が多いフリーターらを独立世帯みなすと、もっと上昇する可能性が高い。

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