インフォーメーション・サービ100:2006年度対策 経済史・経済事情 連載第13「市場経済移行諸国」


]V 市場経済移行諸国

 中・東欧は、90年代初めのマイナス成長から脱し、直接投資や輸出の増加により、着実な成長を遂げている。そして、2004年に、中・東欧の10カ国は、EUに加盟し、更なる飛躍が見込まれている。

注:EU加盟の中・東欧10カ国は次のとおりである。

ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スロベニア、マルタ、エストニア、ラトビア、リトアニア、キプロス

1 ロシア経済

(1)市場経済移行後のロシア経済

 91年末に、ソ連は崩壊し、ロシアは市場経済化路線をとった。しかし、90年代のロシア経済は、この路線が成功したとはいえない。90年代の実質GDP成長率は、平均で−5.0%であり、消費者物価上昇率も平均で481.1%であった。

 移行後、初めてプラス成長になったのは、97年であった。97年は、ロシアの恵まれたエネルギー部門などへの外資の受け入れにより、工業生産が伸び、プラス成長となった。

(2)98年のロシア金融危機

 98年に、金融危機が発生し、実質GDP成長率は再びマイナスとなり、−4.6%となった。当時、ロシアの高利の短期国債に外資が流入していたが、アジア通貨危機を契機に、外資がロシアの構造問題に懐疑的となり流出した。株価は急落し、短期国債の利回りは急上昇し、金融危機が発生した。ルーブルの売り圧力は強く、1998年9月に固定相場制から変動相場制へ移行した。

ロシアの構造問題

a.資本の国外流出が進み、犯罪などの地下経済が拡大し、徴税率は低く、歳出の削減が進まず、構造的財政赤字であった。この財政赤字を高利の短期国債の大量発行で賄っていた。

b.石油、天然ガスなどの一次産品に依存した貿易・経済構造である。

(3)99〜2004年のロシア経済

 99年は、実質GDP成長率が5.4%と、市場経済移行後最大の成長率となった。これは、為替レートの大幅な減価により輸入代替による生産が増加したことや、国際価格が上昇した原油、天然ガスなどの輸出や生産の伸びが大きかったためである。2000年も、原油、天然ガスの生産の高い伸びは続き、前年より高い9.0%成長であった。

 2001年も、ルーブル切り下げによる国際競争力の上昇や、原油・天然ガスなどの国際価格上昇を背景に、5.0%の成長となった。  2002年は、同様の要因により、4.3%の高成長であった。ただ、固定投資が、前年までの2桁の伸び率から、前年比2.9%へと大きく鈍化したため、成長率は鈍化した。

 2003年も、可処分所得の高い伸びによる個人消費の増加や、原油価格上昇のため、7.3%の高成長で、金融危機以降5年連続の高成長となった。

 2004年は、7.1%の成長で伸びが若干鈍化したが、景気拡大は続いている。原油、天然ガスが高値で推移したため、輸出金額が大幅に拡大した。このため、可処分所得が増加し、個人消費は前年比11.0%の高い伸びを示した。

 しかし、ユーコス事件に見られるようにプーチン政権の独裁的・強権的政治姿勢に、一部で企業マインドが悪化しており、内外の企業に投資抑制の動きが出ている。

 財政収支は、景気拡大による税収増加により、2001〜2004年まで4年連続黒字である。2004年は、対GDP比4.2%の大幅な黒字であった。そのため、IMF債務の繰り上げ返済や、債権国会議への一部前倒し返済が決定している。

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